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コロナ禍で加速したリテールの変化〜事例から新しい店舗・流通の形を考える

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コロナ禍で大きな変化を遂げるリテール業界

2020年に世界を襲い、未だその影響が続くコロナ禍において、人々の行動様式は大きく変わり、それに伴いリテールも大きく形を変えてきたように見受けられます。それは、コロナ禍が始まる前から、AI、ブロックチェーン、XRなど様々な領域においてテクノロジーの急激な進化が続いており、社会全体を巻き込むだけの十分なテクノロジーの土台があったからこそ、コロナ禍をトリガーとして、起こるべくして起こったと言えるでしょう。

流通業界は、生活者と密接に関連する領域だからこそ、時代の変化に最も敏感に反応し、形を変えてきた業界であるが故に、このDXの流れの中での流通業界の変化を見ることが、社会がどう進もうとしているのかを考える上での1つの指標になりうると思われます。

例えば、流通業界におけるテクノロジーを使った大きな変化の1つとして例に挙げやすい「amazon GO」は、これだけ流通業界で様々な変化がある中で、だいぶ昔の事例のように感じるが、最初にamazonの本社内でオープンしたのは2016年12月、つまりまだ5年も経っていない事例になります。「amazon GO」は、入場時にamazon IDと紐づけることで、購入物全てamazonでの決済を通すことが可能となり、レジを通さずに買い物ができる店舗として一時期話題になりました。買い物体験として、ECと紐付けができるようになったということは、つまり今まで個人紐付けでのデータが取れていなかったリアル店舗における購買行動が、ECにおけるデータ分析と同じレイヤーで、消費者の行動分析をすることが可能になったことを意味しています。まさにこれこそがDXの基本中の基本の部分であると思われます。

リテール業界のDX

リテール、流通業界におけるDXを考えるとき、大きく2つの側面でそれを捉えることができます。
①デジタルを駆使したリッチな購買体験の提供
②消費者の行動データを分析した最適なマーケティング策定

①は、ECやVRなどを統合したデジタルコマースでの消費購買行動に、リッチな「感覚体験」を付与することで体験価値の向上を目指すものであり、②は店舗というリアルな“場“を起点として、消費者の行動履歴や、属性、購買意思決定に至るプロセスを取得・解析、店舗設計や在庫管理に反映させることを主たる目的としたものです。

これまで②の分野でのデータ取得、解析、分析などが争点となる議論がマーケティング分野で盛んに行われてきましたが、「amazon GO」を先駆けとして様々な事例が生まれて、ある程度取れるデータとその分析手法、アウトプットデータが体系立てられるようになってきています。一方で、①の分野については、新しいテクノロジーが出てくる度に新しい売り方ができるようになるという意味で、半永久的に進化を続けている領域です。ARやVR、ホログラムなどの新しい映像体験、様々な用途のロボットを使用した店頭オペレーション、全く新しい業態店舗など、流通業界におけるDXには様ざなアプローチ方法があり、それぞれの方向において最新の技術を掛け合わせることで、これまでにない全く新しい事例が世界中で生まれ続けています。今回はこの②についていくつか事例を交えながら、考察していきたいと思います。

体験特化型店舗

体験型店舗と言って真っ先に思い浮かぶのはD2Cの事例でしょう。商品購入自体はECに誘導し、逆に店舗を「ブランド体験の場」と役割づけて、商品やブランドを理解し、そしてファンになるための体験提供を徹底しています。顧客のエンゲージメントやブランド理解度を重要視するD2Cブランドはこういった形態を取ることが多いのが特徴です。
例えば、D2Cブランドストアとは異なり、複数のブランド/商品を複合的に体験できる場所として有名なのは「b8ta」です。日本にも2020年8月に上陸し、現在3店舗展開しているが、本国アメリカでは2015年にシリコンバレーでオープンしてから、全米約20店舗に拡大してきています。筆者自身も日本上陸前にサンフランシスコでb8ta初体験をしました。噂に色々と聞いていたため全く新しいイベントにでも向かうかのように意気揚々と店舗に行ったところ、店舗では地元の人たちが「日常生活」の一環としてウィンドウショッピングするように来店していた様子を見て、アメリカ社会で感心したのを覚えています。

「b8ta」

出典:https://b8ta.jp/

「SHOWFIELD」

出典:https://showfields.com/

バーチャル/オンライン店舗

アクセンチュアインタラクティブが発行している「FJORD TRENDS 2021」によると、「北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域の消費者3,000人以上を対象に行った調査によれば、没入型技術を試す意欲の高まりを受け、主要消費者ブランドの64%が AR、VR、3Dコンテンツ、360度動画に投資」しているといいます。ブランドがこうした消費者体験を提供することに比例して、販売の場においてもこうしたバーチャル、デジタル化が急加速で進んできています。世界に比較して、まだまだEC普及率が低水準となっている日本においては、こうしたバーチャル/オンライン型店舗についても、海外と比較してまだまだ事例が少ない状況です。

「RALPH LAUREN Virtual Experience」

出典:https://ralphlaurenvirtualstores.com/888-madison/#/

「Dior VR Store」

出典:https://virtualstore.dior.com/champs-elysees/#/en-int

「アリババ『BUY+』」
中国のEコマース企業、アリババグループの提供する「BUY+」は、2016年に中国国内にリリースされたVRショッピングサービス。仮想空間内を自由に動き回ることができ、リアル店舗に近いしい買い物体験をすることができます。

出典:https://www.moguravr.com/buy-release-9/

・国内事例

「リビングハウスバーチャルショップ」

出典:https://www.livinghouse.co.jp/information/2020/86466/

「SHISEIDO VIRTUAL FLAGSHIP STORE」

出典:https://vgfs.shiseido.co.jp/

「VR PARCO」

出典:https://voyagegroup.com/news/press/01_20170322_01/

ロボット店舗

今まで人を介して行われていたホスピタリティサービスをロボットが代替することで、無人化or省人化を実現するロボット店舗が様々な業態で見られています。人口減少に伴う労働人口の減少で人手不足が大きな社会問題となっている日本においては、労働力を担保するという意味では非常に重要な課題解決ソリューションである一方で、人手不足という顕在化した課題解決というだけでなく、もっとディープな課題にチャレンジして、全く新しい価値を提供しているケースも見られています。

「PuduTech」
カフェテリアなどでの配膳と食後のトレイ回収に特化した屋内専用の低速自律走行 ロボット。センサーとカメラから取得する情報を元に、人や障害物を避けて走行します。 COVID-19の拡大を受け、世界中の病院にも同社製品を提供しています。


出典:https://www.pudurobotics.com/

「PEANUT」
テーブルに料理を運んだり、食後の食器類を下膳するためのフロアーロボットです。飲食業界のみならず、オフィス、ホテル、病院、など衛生面、重量物搬送等様々な面で人のお手伝いが可能です。


出典:https://pcpos.co.jp/

「分身ロボットカフェ『DAWN』」
様々な障がいを抱える人のための分身ロボットを開発する「オリィ研究所」が2021年に日本橋に新しくオープンしたのは、「分身ロボットカフェ」です。難病や重い障がいを抱えていたり、家庭の事情等で外出できない人が、自宅から分身ロボットを遠隔操作して接客するカフェで、新たなテレワークの可能性を模索する社会実験と謳い、外出できない人の働く機会や働き方の新しい可能性を提示する全く新しい飲食店の形になりました。


出典:https://dawn2021.orylab.com/

 

実証実験店舗としてのポップアップ

テクノロジーにより全く新しいリテールの形を模索する方向とは別に、リテールをこれまでにない使い方をすることで、新しい流通業界の可能性を模索する方向性もあります。例えば、先に事例としてあげた「b8ta」は、開発したばかりのガジェットなどをテスト的に市場導入し消費者が体験・購入できる場であり、一見するとガジェットを集めた普通のショップに見える一方で、そこでの来店客の行動分析やリアクション解析により、そこで展示販売しているプロダクトのテストマーケティングを実現しています。もちろん、この背景には店内に設置されたAIカメラによるトラッキングデータ分析などテクノロジーの力が不可欠ではありますが、本質はその手法としてのテクノロジーではなく、「店舗をどういう場として定義づけるか」という概念にあると思われます。

こうした、リアル店舗をテストマーケティングの場として利用するという意味合いで、ポップアップストアの形態を利用するブランドが増えてきています。ポップアップストアという手法自体は、プロモーション手法として古くから使われてきたものであり、ブランドや商品がプロモーションの一環として世界観を追求した店舗空間を期間限定でオープンし、消費者にその空間を体験してもらうことで商品理解を深めてもらうための場です。いわゆる「世界観の追求」がポップアップの元来の役割でありますが、そこにテストマーケティングの意味合いを付与することで新しいリテールの可能性が見えてきています。

例えば、当社が担当した事例として、佐賀県の日本酒PRの一環で表参道にオープンした「SAKIURA CHILL BAR」の場合、佐賀の日本酒に、春シーズンということでの桜の世界観を掛け合わせて、チルアウトな雰囲気を演出しPRするという施策でした。普通に考えれば、世界観を最大限追求したポップアップストアではありますが、一方で、なかなか若い世代に親しまれにくい日本酒という存在を、より若者のカルチャーの中に溶け込ませ、彼ら彼女らのライフスタイルの中に落とし込むことで佐賀の日本酒が新しい価値を発揮しうるかというテストマーケティングの側面も見えてきます。実際、毎日行列ができるほど若い世代の人が集まり、佐賀のおつまみとともに日本酒を味わい、この若い世代の中で確かな存在感を発揮できました。

また、JR東日本グループの中で、新しいビジネス創出のためにいくつかの特定事業領域を対象とした出資を行うJR東日本スタートアップが実施した「STARTUP STATION」も、テストマーケティングのためのポップアップの象徴的な事例です。このポップアップでは、JR東日本スタートアップが出資したスタートアップのプロダクトを集めて、まだ世に出ていない様々な商品やサービスを限定的に体験できる場として機能し、かつ駅構内に設置することで電車を日常的に利用するごく普通の市民との偶発的な出会いを演出し、マーケティングの新しい可能性を各スタートアップに提供する画期的な役割を果たしています。ある種、b8taの期間限定ポップアップ型ということができるでしょう。


出典:https://jrestartup.co.jp/

こうした、テストマーケティング、実証実験の場としてのポップアップは、コロナ禍ではどうしても難しい状況にありますが、今後緊急事態宣言が明けて、人々の生活が元に戻り始めた頃には、これまで家に篭りデジタルの中だけで生活してきた人々の「リアル体験欲求」が再燃し、ポップアップストアにおけるブランド体験価値は、これまでにない貴重な存在になると思われます。

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